2011年7月20日水曜日

その27

対象的な二つの記事

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中国経済:計画経済化が進む不動産市場=田代尚機


V 【経済ニュース】 2011/07/20(水) 11:07

  中国の不動産政策はとても興味深い方向に進んでいる。どう興味深いのか。少し誇張気味に言えば、市場経済を否定し、計画経済を肯定しているからである。

  国務院は12日、常務会議を開き、不動産政策について今後の方針を示している。もっとも、何か目新しい政策が発表されたわけではない。ただ、やるべきことが非常にはっきりしてきた。国務院は商品住宅の価格を断固として抑制する一方、保障性住宅の供給を増やすといった戦略を、同時に実行することにしたのである。

  まず、商品住宅価格の抑制について。少し基本的なことも解説しておこう。商品住宅とは市場経済を通じて供給される住宅である。土地の出し手は主に地方政府。不動産開発の主体は地方、中央政府系列の業者あるいは民営の業者である。買い手は一般消費者である。ただし、一般消費者といっても、特殊な人々である。一般労働者の平均をはるかに超える所得、あるいは資産を持っているか、あるいはお金を簡単に作り出すことのできる何らかの利権を持った者である。わかりやすく、もっとラフに言えば、金持ちか、有力者である。

  商品住宅市場の参加者は、どうしたら自分たちの利益が最大になるのか知恵を絞り合い、これまで、激しい戦いを繰り返してきた。その結果が、現在のようなバブル市場を作り出してしまっている。大都市圏においては、ちょっと立地の良い高級住宅の価格が一般労働者の50年分の年収となってしまっているのである。

  多くの欧米人、日本人は、中国の住宅バブルは深刻だと思っているだろうが、実際はそうでもない。もともと、商品住宅は庶民とは無関係な投機商品に過ぎない。株式市場において株価が合理的な配当利回り水準を超えて買われているのと大して変りはない。一応住むことができるので、株よりかは幾分ましな部分すらある。

  しかし、需要を支えているのは不動産神話である。非常に根強いし、これほど便利な投機取引商品は国内には見当たらないため、いつまでもバブルを続けることができそうだとも思う。しかし、それでいいのか……。

  国務院の答えははっきりしている。2009年12月より、不動産価格抑制策が発動されているが、その時点から一貫して、価格が下がるまで政策を続けるといった方針を明らかにしている。このバブルは中国経済にとってプラスにはならないこと、これ以上バブルが過ぎれば、貧富の格差を拡大させるだけでなく、価格が急落することがあれば市場参加者の多くはかなり大きな経済的損失を蒙る可能性がある。

  その対策は、欧米人や日本人には発想しにくいものとなっている。まず、住宅購入者に対しては、銀行借入の限度額を厳しく制限した。2件目、3件目の住宅を買わせないためである。また、戸籍か、就業実態がなければ、その地域の物件を買わせない。投機を防ぐために、政府は徹底して需要サイドを管理している。

  一方、供給サイドはちょっと複雑だ。地方政府は、土地をできるだけ沢山、高く売れば、それを原資として巨額の予算を獲得することができる。もちろん、自分たちの給与を増やし、青天井の交際費を獲得でき、さらに豪奢な施設を作ることもできるが、そんなことよりも、この資金を使って、地方政府を発展させれば、幹部は共産党組織の中で出世するチャンスが拡大する。

  国務院は、このような立場にある地方政府に対して、不動産価格について責任を持たせ、管理させようとしている。具体的な数値目標を作らせ、それ以上不動産価格が上がらないように管理させようとしている。それができなければ、組織のトップは人事上、致命的なダメージを受けることになる。

  国務院が市場取引に直接関与しようとしている点、需要にも供給にも関与し、価格を下げることを政策目標としている点は、明らかに、市場経済を否定した行為と言わざるを得ないであろう。

  そしてもう一つ重要な政策が打ち出されている。それは保障性住宅建設の加速である。国務院は中央、地方政府予算を使ったり、担保保証したりして、住宅供給そのものに関与しようとしている。そのことによって、庶民に対して、直接住宅を供給しようとしている。簡単に言ってしまえば、住宅市場の計画経済化である。

  住宅は波及効果が大きい。セメント、鉄、建材から、住設備、家電製品、家具、生活雑貨に至るまで、需要が喚起される。国家が計画経済を進めることで総需要が作り出されることになる。

  この20年間の経済発展の結果だけから判断すれば、中国経済は、欧米、日本に対して勝者であったと言わざるを得ない。

  その間の成功は市場化を進めたからといった見方は一面的すぎる。これまでも必要であれば国家が総需要、総供給をコントロールするようなことを度々続けている。そのことも中国経済成功の要因であるとみるべきであろう。

  盲目的な市場経済の追及が国家発展に繋がるとの思い込みは危険である。市場経済が一番だ、小さな政府がもっとも効率的だと信じ、政府が経済に対して何も責任を持とうとしないことは、もっと危険である。

  日本政府は、中国の模倣をすればいいとは言わない。しかし、どんなゲームでも戦略がなければ絶対に勝てない。政府が責任を以て国家の発展戦略を設計しなければ、国家は衰退するだけである。(執筆者:田代尚機 TS・チャイナ・リサーチ(株)代表取締役 編集担当:水野陽子)

レッド・センセーション on サーチナ 第155回-田代尚機 コラム
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もうひとつ

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中国の「成長神話」崩壊 地方は借金の山、バブル崩壊に市場は戦々恐々

中国経済の成長神話にかげりが見え始めた。不動産バブル崩壊や地方政府の不良債権問題が重しとなり、専門家らの間では中国経済の急速な減速は避けられないとの見方が支配的だ。中国の貿易相手国の経済に影響が広がるとの見方も出ている。専門家が疑問の声


 2011年4~6月期の中国国内総生産(GDP)は9.5%のプラスと予想以上の伸びを記録したものの、成長のペース自体はほぼ2年ぶりの低水準にとどまった。一方でインフレには歯止めがかからず、08年以来最速となる6.4%の割合で進行している。

 また、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、中国地方政府の負債総額について、政府発表を5000億ドル(39兆5600万円)上回る可能性があると発表した。

 こうした状況を受け、中国経済の先行きをめぐり、高成長の反動による急速な落ち込みを意味する「ハードランディング」への懸念が浮上。北京の清華大学で経営学を教えるパトリック・コバネツ教授は「以前は誰もが信じて疑わなかった中国の成長神話だが、今や疑問の声を上げる専門家が後を絶たない。市場心理の大転換が起こった」と分析する。

 ほとんどのアナリストは、中国経済が破綻、もしくは停滞に陥ったとみなす条件として同国GDP成長率が7%を切るケースを挙げる。こうした事態は、インフレと不動産バブルの崩壊によって引き起こされる可能性がある。

 米ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディー上級研究員によれば、03年に3.4%だった中国の最終需要に占める住宅投資の割合は、現在9%にまで拡大しているという。

英スタンダード・チャータード銀行は、中国の不動産市場について10年7~9月期からマンション在庫が積み上がり始めていると指摘。今後マンション価格が急落すれば、中間層の貯蓄に影響を与えるほか、不動産投資を進めてきた地方政府の財政も圧迫することになる。


 香港城市大学で政治学を教えるジョセフ・チェン教授によれば、地方政府の中には収入の6割超を土地の売買に依存しているケースもあるという。

 ムーディーズは中国の貸出債権について、全体の8~12%が不良債権化する可能性があると試算。同業のフィッチ・レーティングスも債権全体の最大3割が不良債権化するリスクを抱えると警鐘を鳴らす。

 不良債権の増加は金融機関による貸し出し資産の圧縮を招き、中小企業を中心に信用不安が拡大する。政府IT(情報技術)産業部によると、中国国内の雇用の8割は中小企業に集中している。

貿易相手も大打撃

 フィッチは6月、中国経済の失速が世界各国に与える影響をまとめたリポートを発表した。それによれば同国の主要な貿易相手国の集まるアジア太平洋地域が最も大きな打撃を受けるという。同リポートは12年の中国の成長率が4%にとどまったケースを想定し、同国への各国からの輸出量が急落すると予測。中国は世界で生産される鉄鉱石、石炭、鋼鉄の半分近くを消費するほか、日本や韓国で製造される電子機器、自動車の巨大市場でもある。

 またフィッチのマネジングディレクター、トニー・ストリンガー氏(ロンドン在勤)は、中国政府が財政逼迫(ひっぱく)を理由に米国債の購入を減らす事態にも言及。他の買い手を求める米政府が債権利率の引き上げを余儀なくされる可能性を指摘した。(ブルームバーグ Dexter Roberts)

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評:同じ時期に正反対の無いようである。

上の記事は中国政府に近いところか?
しかし、中国の不動産は計画経済の賜物ではなく計画経済の成果としているところに
違和感を感じる。市場経済を共産党は完ぺきにコントロールしていると見ているのか。
であれば、実需を超えた部分で起きる、住宅価格の高騰などあり得ないのではないか?
題名の「計画経済化が進む・・・」というくだりには甚だ疑問符がつく。

下の記事をうのみにするのもまちがっているように感じる。
第三者的な立場をとる人間はいつも無責任である。
ただし、数値を使っての説明はある。
その数値の根拠がしっかりしていれば、説明に問題はないように考える。

「考える」って言い方よくないよなぁ・・

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