2011年7月29日金曜日

その32

転載(グラフ等はもとの記事を読むこと)

2011年07月29日05:31

中国投資の転換点? 撤退のラッパは鳴り響く! - 鬼軍曹ゲストブロガー:鬼軍曹


「海外投資への扉」というサイトを運営。


独立系投信会社にて長期投資家向けのFOF(ファンドオブファンズ)の運用を担当。

運用に関しては個別銘柄の分析は投資先のファンズに任せ、主にマクロ分析と投資先

のファンズのリサーチに専念している。ファンド運用で最も気を付けている事はボラティリティーのコントロール。

現在はリスクを抑えるためファンドのキャッシュ比率を引上げ済み。

この30年あまり中国は平均実質経済成長を二桁近い高い水準を維持してきた。2008年には北京オリンピック開催、2010年には名目GDPが日本を抜いて世界第二位になり、G2(米中)時代の到来とも言われるようになった。

しかしその一方で、2008年にはチベットで2009年には新疆ウイグル自治区で大規模な民族運動が発生。日本の尖閣諸島をはじめ周辺諸国とも領土問題で衝突を繰り返している。今回は、投資対象としての中国及び中国経済について話をしたいと思います。





結論から先に言うと、まず中国の高い経済成長が持続不可能になる時期が刻一刻と近づいていると思う。それに合わせて中国で形成された不動産バブルの崩壊も不可避になってきていると思う。様々な政策によって崩壊の時期を多少先延ばしできるとは思うが、暴落するか時間をかけて持続的に下落するかの違いであり、そろそろ中国バブル崩壊の影響を回避することを考える時期に来たと思う。

・中国GDPの問題点

GDPが国内で生産される付加価値の総額で、国の豊かさを表す指標であるならば、「政府」「企業」「家計」は順序やタイムラグはあるとしても、7~10年程度で2倍程度豊かになってきたはずである。


実際、自分も何度も中国を訪れてみて日本人が仕事や旅行で訪れる北京や上海などの大都市の生活水準は大幅に上昇してきたことが実感できたが、新疆ウィグル自治区をはじめとする内陸部では公共工事によるインフラ整備は地方政府にコネのある人々にしか恩恵をもたらさず、特に少数民族は利用されない幽霊ビルやショッピングセンターをバカにしたり乱開発に怒っていた。


それを表すように、中国のGDPに占める個人消費の割合は

2001年 45.34%  2005年 38.82%  2009年 35.51%(出所 JETRO)

と年々個人消費の割合は減少し、相対的に中国の個人は貧しくなっている。


(国や企業は物質的に豊かになっているのに、個人はその豊かになった分を消費できていない)

これとは反比例してGDPに占める固定資産投資(道路などのインフラ開発や不動産開発や工場の建設)の割合は

2001年 34.63%  2005年 39.67%  2009年 45.41%(出所 JETRO)


と増加している。しかし、固定資産は将来更新するために年々有形・無形の収益から償却していく必要があるのだが、国民が消費(利用)することで償却財源を負担できない現状では、「企業」が海外に輸出して稼ぐか、海外から新たな投資を呼び込んで再投資しなければ固定資産は減価償却によって失われていく。

中国におけるGDPの高成長は固定資産投資に依存したいびつな構造をしており、中国国民全体に恩恵をもたらしてはいない!


・人民元の問題点


人民元が世界の準備通貨(基軸通貨)であるドルの地位を奪うかのような金融・経済的に無知な議論が展開されているが、まず人民元は非常に弱い通貨である事を認識することが重要だ。


図の通り、中国は1989年6月4日に発生した天安門事件の後、鄧小平が1992年に行った南巡講話の後に、人民元を大幅に切り下げた。公定レートが実勢レートと大きくかい離し海外投資を呼び込めなかったためだ。

この後、中国はWTO加盟などを経て輸出主導の加工貿易で海外投資を呼び込み急速に発展した。元の大幅切り下げと同時にドライブがかかるように輸出が急増している。

この図を見て、自分には中国の競争力は通貨切り下げによる安価な労働力と海外投資としか見えないが・・・

現在、人民元の切り上げ論争が起こって米中を中心に大騒ぎしているが、人民元の切り上げでなく人民元を1990年の水準に戻すと言った方が正確である。


「人民元」が投資対象として失格な理由


・インフレ率(2011年6月 6.4%)に対して預金金利(2011年7月 1年定期 3.25%)が低く元ベースでは実質的に目減りしてしまうこと。

・中国政府の人民元相場の元安介入で国内のインフレ圧力が高まっており、このまま放置すれば元価値が減価する形で調整する可能性がある。(為替レートによる調整をインフレで行って元が切り上がらない可能性)

・資本規制が厳しく資金の出し入れが難しい。いざという時に換金できない可能性がある。それを不安視して中国の富裕層は人民元を海外資産や米ドルに替えている。そういう自国の支配層や資本家層が持ちたくない通貨に日本人が投資する理由が自分には理解できない。

・最近の中国株式について

まず、GDPの成長と株価の上昇に何ら関係ないといことから理解してほしい。

ある因果律(おカネの流れや資本の動きetc)が、企業の生産活動や投資行動、個人の消費行動、国家の分配や投資行動に影響を与え、その結果として企業業績や株価、GDPに反映される。つまり、GDPと株価は同じ結果に過ぎず、原因と結果のような因果関係はほとんど存在しない。


だからGDP高成長国に投資を行うと言う行為は、昨年株価が大きく上昇した企業の株式に今年も上昇すると期待して投資する行為に他ならない。(投資経験のある方には如何にナンセンスかお解りいただけるはず)そもそも、GDPで株価が説明できるならば平均10%近く成長している株式市場が2007年に急落するはずがないではいですか。(自分は現在の上海株式市場のチャートを見ると成長市場と言うよりはITバブル崩壊後のNASDAQのベアマーケットのようにしか見えないですが)
中国政府の巨額のインフラ整備や先進国製造業の中国移転、巨大な人口を擁する中国市場への期待感などから、これまで継続的に桁違いの投資が行われ、海外から巨額の資金が流れ込んできました。これが中国経済の発展、株式市場の拡大の本質的な原因である。しかし今、その流れが変わろうとしている。

最近、中国経済や不動産のバブル懸念が、欧米の新聞や経済誌の紙面を大きく飾るようになってきました。そして、中国の株式市場や中国企業の海外進出を支えてきたインサイダーである欧米の金融機関や会計事務所、コンサルタント達が足抜けを始めている。これまで、中国企業の資金調達でたっぷりと甘い汁を吸ってきた欧米の証券関係者やコンサルタント達が、中国企業に空売りを浴びせて上場廃止に追い込み、上場廃止に伴って撤退手続きの請求で身ぐるみ剥ごうとしている構図は、日本人からすると腐肉にハイエナが群がっているようでちょっと怖いですね。テマセック(シンガポールのSWF)のような戦略的パートナーが持ち株を売却するのも、沈み始めた船からネズミが逃げ出す構図と似ていて気味が悪いですね。


結 論

短中期的に中国経済大幅な調整は不可避だと思われる。個別企業のPER等が適正水準でも、バブル崩壊時は保有資産の下落や会計基準の問題発覚等で現状の評価基準は意味をなさない事が多い。早い段階で投資を行って利益を得てきた投資家達が利食いや撤退しているのを我々も見習って、利がのったものは利食い売りを行い(利食い千人力)、回復が見込めない投資先は損が拡大しない内に思い切って損切りを行う。そしてリーマン・ショックの時のように、出口に皆が殺到する前に「元」を「円」や「ドル」にチェンジすることだ。(これは企業の中国への直接投資も当てはまる事です、事業の撤退計画や投資資金の回収ルートを確保する時期です)



余程の目利きであればガラス玉の山の中のダイヤモンドを見つけ出せるかもしれないが、バブルが崩壊する時はダイヤモンドを拾うとして生き埋めになる可能性もある。混乱が収束して中国株に誰も見向きもしなくなった頃に閑散とした中国市場に戻ってきて拾った方が安全です。

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評:大変参考になる記事です。
数値も、信頼できる所からのものです。

やはり、一度大きくはじけるのかもしれません。

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